採用は、求人票を出す前から始まっています
採用活動というと、求人票を作る、媒体に掲載する、スカウトを送る、面接をする、といった流れを思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろん、どれも大切な実務です。

ただ、実際には候補者が応募ボタンを押す前から、勝負はかなり進んでいます。転職を考え始めた人の頭の中には、「次に働くなら、あの会社はどうだろう」という候補が自然に浮かびます。その中に入れている会社と、まったく思い出されない会社では、同じ求人条件でも反応が変わります。
中小企業の採用では、大手企業のように知名度だけで応募が集まるわけではありません。だからこそ、応募前の段階で「思い出してもらう」「安心してもらう」「働くイメージを持ってもらう」ための採用広報が重要になります。
第一想起とは、最初に思い浮かぶ会社になることです
マーケティングでは、ある場面で最初に思い浮かぶブランドを「第一想起」と呼ぶことがあります。採用でも同じ考え方ができます。
たとえば、候補者が「地元で腰を据えて働きたい」「子育てと両立しながら働きたい」「未経験から営業に挑戦したい」「技術を活かして裁量のある職場へ行きたい」と考えた瞬間に、どの会社が頭に浮かぶかという話です。
求人票を見て初めて知る会社よりも、以前から名前を見たことがある会社、社長や社員の考えに触れたことがある会社、働く様子がなんとなく想像できる会社のほうが、候補者にとっては検討しやすくなります。
ここで大事なのは、全国的な有名企業になる必要はないということです。採用したい人材の頭の中で、特定の文脈において思い出される会社になることが大切です。
キャリア文脈を押さえると発信が変わります
候補者は、いつも「転職したい」と思っているわけではありません。何かのきっかけで、働き方や職場について考え始めます。
そのきっかけには、さまざまなものがあります。今の仕事で成長が止まっていると感じたとき、家族との時間を見直したいとき、地元に戻ることを考えたとき、給与だけでなく人間関係や裁量を重視したくなったときなどです。
こうした候補者の思考の入口を、ここでは「キャリア文脈」と捉えます。採用広報では、会社が言いたいことを一方的に並べるだけでなく、候補者がどんな場面で仕事を見直すのかを考えることが重要です。
たとえば、「若手が活躍しています」と書くだけでは、やや抽象的です。そこに、「入社後に任される範囲」「相談できる先輩の存在」「失敗をどう受け止める文化があるか」まで伝えると、候補者の不安に近づいた発信になります。
応募先の候補に入るには、接点の積み重ねが必要です
候補者は、いきなり一社だけを見て応募先を決めるわけではありません。頭の中にいくつかの候補を並べ、比較しながら判断します。この候補の集まりに入れるかどうかが、採用では大きな分かれ目です。
求人票だけで候補に入ろうとすると、給与、休日、勤務地、福利厚生といった条件で比較されやすくなります。もちろん条件は大事ですが、条件だけの勝負になると、中小企業にとっては厳しい場面もあります。
そこで効いてくるのが、日頃からの情報発信です。会社の考え方、仕事の進め方、社員の雰囲気、顧客との向き合い方、地域との関わりなどを少しずつ伝えておくことで、「前から気になっていた会社」として候補に入りやすくなります。
採用広報は、募集が出たときだけ急に動くものではありません。平時からの発信が、応募時の心理的な距離を縮めます。
周囲のひと言も、応募の後押しになります
候補者が応募を考えるとき、本人だけで決めるとは限りません。家族、友人、前職の同僚、地域の知人など、周囲の人の印象が影響することもあります。
「あの会社、最近よく見るね」「雰囲気が良さそうだね」「知り合いが働いているけれど、ちゃんとしている会社らしいよ」。こうした周辺からの承認は、応募や内定承諾の後押しになります。
逆に、会社の情報がほとんど出ていない場合、周囲も判断材料を持てません。候補者本人が興味を持っていても、家族に説明しづらいことがあります。
採用サイトやSNS、オウンドメディア、プレスリリース、地域メディアでの露出などは、候補者本人だけでなく、その周囲にも届く情報です。採用広報は「応募者を増やすため」だけでなく、「安心して選んでもらうため」の土台にもなります。
採用で伝えるべき3つの要素
採用広報を考えるときは、伝える内容を整理しておくと発信がぶれにくくなります。ここでは、POP、POD、RTBという考え方で整理します。
POP:候補者が当然知りたい基本情報
POPは、候補者が比較検討するうえで最低限知りたい情報です。仕事内容、勤務地、勤務時間、休日、給与、選考フロー、入社後の流れなどが当てはまります。
ここが曖昧だと、どれだけ良い想いを語っても不安が残ります。求人票や採用ページでは、基本情報をわかりやすく整えることが出発点です。
POD:その会社らしい違い
PODは、他社との違いです。特別な制度がなくても構いません。社長との距離が近い、顧客と長く付き合う仕事が多い、未経験者を育てる文化がある、現場の改善提案が通りやすいなど、その会社ならではの特徴を言語化します。
大切なのは、きれいな言葉にしすぎないことです。実態と離れた表現は、入社後のギャップにつながります。等身大の魅力を、具体的なエピソードと一緒に伝えるほうが信頼されます。
RTB:信じてもらうための根拠
RTBは、候補者が「それは本当らしい」と感じるための根拠です。社員インタビュー、1日の仕事の流れ、実際のプロジェクト紹介、社内風景、数字で示せる実績、顧客の声などが該当します。
「働きやすい会社です」と言うだけでは、なかなか伝わりません。どんな場面で働きやすさを感じるのか、誰がどのように働いているのかを見せることで、言葉に説得力が生まれます。
中小企業こそ、採用広報を資産にできます
採用広報は、一度発信して終わりではありません。記事、インタビュー、写真、動画、代表メッセージ、仕事紹介などは、会社の資産として残ります。
特に中小企業では、社長の考え方や現場の空気が、採用に大きく影響します。大きな予算をかけなくても、継続的に発信することで「この会社らしさ」は少しずつ伝わります。
たとえば、採用ページを整える、社員インタビューを公開する、仕事の裏側を記事にする、SNSで日常を発信する、地域での取り組みを紹介する。こうした一つひとつの接点が、応募前の候補者に届いていきます。
採用を「求人を出してから始める活動」と見るのではなく、「未来の候補者との関係づくり」と捉えると、やるべきことが変わります。
まずは、思い出されたい場面を決めることから
採用ブランディングと聞くと、大がかりな取り組みに感じるかもしれません。しかし、最初に考えることはシンプルです。
自社は、どんな人が、どんな気持ちになったときに思い出してほしい会社なのか。その場面を決めることです。
「地元で長く働きたい人に思い出してほしい」「営業経験を活かして、もっと顧客に向き合いたい人に届いてほしい」「未経験でも手に職をつけたい人に知ってほしい」。このように文脈を定めると、発信する内容や言葉選びが具体的になります。
求人票を磨くことは大切です。ただ、その前に候補者の頭の中にどんな印象を残しているかを見直すことも、同じくらい大切です。
ビークプロモーション株式会社では、採用サイトやオウンドメディア、採用広報の設計を通じて、中小企業の魅力が伝わる発信づくりをお手伝いしています。採用に向けた情報発信を見直したい方は、30分相談からお気軽にご相談ください。

